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2026.02.02

東洋病院 今日の献立 第24回

笑顔がこぼれる病院食|本日は特別メニューの「握り寿司」です

やさしい味付けと彩りのバランスが、目にも心にも食欲を運んでくれます。病院食というと「味気ない」という印象を持たれがちですが、当院の献立は家庭的な温かみと栄養バランスの両方が整った一食です。
このお食事は隣接するサービス付き高齢者向け住宅、ショートステイやデイケアでも提供されています。入院中の方だけでなく、在宅生活を送る高齢者や通所利用者様も、同じ美味しさと健康サポートを受けられるのです。

寒さの中にも、少しずつ春の足音が聞こえてくるような季節となりました。 入院中の皆様、そしてご家族の皆様、いかがお過ごしでしょうか。 毎日の病院生活において、食事の時間は、単なる栄養補給以上の大切な意味を持っていると私たちは考えています。

それは、季節の移ろいを感じたり、懐かしい味に心を和ませたりする「癒やし」の時間です。 本日は、そんな想いを込めてご用意した、少し特別な献立をご紹介させてください。

 

からだにやさしい本日の一膳

配膳車からトレイが運ばれてきた瞬間、ぱっとその場が華やぐような献立をご用意いたしました。 本日の主役は、なんと「握り寿司」です。 病院食でお寿司が出ることに驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんね。

お皿の上には、鮮やかなオレンジ色のサーモン、海の宝石のようないくら、ふっくらとした黄色い玉子。 そして、味わい深い穴子に、鮮度を感じるマグロ、プリッとした海老が並んでいます。 一貫一貫は小ぶりですが、どれから食べようかと迷ってしまうような、楽しさが詰まった一皿です。

お椀の蓋を開ければ、ふわりと出汁の香りが立ち上ります。 今日のお味噌汁には、喉越しの良いそうめんが入っており、身体を芯から温めてくれます。 具材の蒲鉾(かまぼこ)の紅白の色合いも、お祝い事のような晴れやかな気持ちにさせてくれますね。

副菜には、お出汁をたっぷり含んだ煮物をご用意しました。 厚揚げとオクラに添えられているのは、可愛らしいお花の形に飾り切りされた人参です。 こうした小さな彩りが、ふとした瞬間に心を明るくしてくれるものです。 デザートには、彩りも爽やかな青リンゴのゼリーを添えました。 フルーティーな香りとすっきりとした甘みで、食後のお口直しもさっぱりと楽しんでいただけるよう工夫いたしました。

エネルギーと栄養のバランス解説

さて、見た目の華やかさだけでなく、栄養の面でも本日のお食事は体に優しい工夫がされています。 お寿司は、良質なタンパク質とエネルギー源となる炭水化物をバランスよく摂ることができる優れたメニューです。 お魚に含まれる脂は、血液をサラサラにする働きがあると言われていますし、何より「美味しい」と感じながら噛みしめることで、消化吸収も良くなります。

煮物に入っているオクラにも注目してみましょう。 実は、オクラは私が大好きな食材の一つなんです。オクラ特有のあのネバネバとした成分は、ムチレージと呼ばれる水溶性食物繊維です。この食物繊維は、腸内環境を整え、お腹の調子を良くする働きがあります。また、糖質の吸収を緩やかにする効果も期待できます。 また、厚揚げはお豆腐の良質なタンパク質が凝縮されており、筋肉や体力の維持には欠かせない食材です。

そして、お酢を使った酢飯は、食欲を刺激する効果が期待できます。 少し食欲がないなと感じている時でも、お酢のさっぱりとした風味があれば、不思議と箸が進むことがあります。 しっかりと食べることは、病気に立ち向かう体力の土台を作ることにつながります。

季節と食養生本日のメニューを読み解く

ここからは少し視点を変えて、東洋医学的なお話をさせていただきます。 「医食同源(いしょくどうげん)」という言葉があります。これは1970年代に日本で生まれた言葉で、病気を治す薬と、日常の食事は、本来その源は同じであるという考え方を表しています。この考え方の根底には、古代中国の『周礼』に記された「食医」の思想や、中国で古くから伝わる「薬食同源」という概念があります。日々の食事が健康を作る基礎であり、体調や季節に合わせて食材を選ぶことが、病気の予防や回復につながるという思想を表しています

冬から春にかけてのこの時期は、外の寒さで体が縮こまり、体内の巡りが滞りやすくなる季節とされています。 そんな時こそ、食事で「気(き)」を養うことが大切です。 「気」とは、生命エネルギーのこと。 彩り豊かで、心がワクワクするような食事を摂ることは、単にお腹を満たすだけでなく、この「気」を巡らせ、心身の活力を高めることにつながります。温かいスープやとろみのある料理(シチューやあんかけ)を取り入れ、内側から温めることは大切です。

今回のお寿司に使われている海老や穴子は、漢方の考え方では、体を温めたり、足腰の力を補ったりする食材として親しまれてきました。 また、赤いマグロやサーモン、黄色い玉子、緑のオクラといった「五色(ごしき)」の彩りは、目で見て楽しむだけでなく、多様な栄養素をバランスよく摂取することにつながります。東洋医学では、色の異なる食材がそれぞれ体の異なる部分を養うと考えられてきました。

体を冷やさないように温かいお味噌汁やお茶と一緒に召し上がっていただくことで、お腹の中からポカポカとし、免疫力を保つ助けにもなるでしょう。 美味しく食べるということは、一番の良薬なのかもしれませんね。

食卓からの小さなエール

ご高齢の患者様の中には、「お寿司は好きだけれど、飲み込みにくいのではないか」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。 ご安心ください。 今回のお寿司は、シャリをふんわりと握り、ネタにも隠し包丁を入れるなどして、口の中でほぐれやすいように工夫を凝らしています。

それでも、ご自身の体調に合わせて、ゆっくりと召し上がってくださいね。 もし、「ご飯の量が少し多いな」と感じたら、無理をして全部食べる必要はありません。 まずは、温かいお汁を一口すすって、喉を潤してから、お好きなお寿司を一つ、口に運んでみてください。 よく噛んで、お魚の旨味とお酢の香りをじっくりと味わうだけでも、十分な栄養と心の満足感が得られます。

また、煮物やお汁の具材も、お箸で簡単に切れる柔らかさに仕上げています。 「食べる」という行為は、あごを動かし、唾液を出し、脳を刺激する、とても大切なリハビリテーションの一つでもあります。 焦らず、ご自身のペースで、季節の味を楽しんでいただければ嬉しく思います。

皆さまの健やかな毎日に寄せて

暦の上では春が近づいていますが、まだまだ寒暖差のある日が続きます。 どうぞ温かいお茶を飲みながら、窓の外の景色を眺めるような穏やかな気持ちで、今日のお食事をお楽しみください。

皆様がこの食事を通じて少しでも元気を取り戻し、笑顔の花を咲かせてくださることを、私たちスタッフ一同、心より願っております。 一日も早いご回復をお祈り申し上げます。

【注釈】

各個人様にお出しするお食事は、体の状態や医師の指示により内容が変更される場合がございます。あらかじめご了承ください。

本記事は一般的なお話であり、個々の診断や治療に代わるものではありません。食事制限や気になる症状がある場合は、必ず主治医や担当スタッフにご相談ください。

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