●-RA(13) 関節外病変(その2) 間質性肺炎
- 間質性肺炎は、肺の間質という肺胞の壁の部分に炎症が起きる病気です。
- 関節リウマチ患者の10-30%に発症するとされており、労作時息切れ(息苦しさ)が自覚症状としてみられます。
- 間質性肺炎の診断には聴診所見や画像検査(胸部X線やCT検査)が必要です。
- 進行するタイプでは患者の生命予後に関わる合併症となります。
- 少量のステロイド薬や免疫抑制薬が有効な場合もありますが、その治療には専門的な知識が必要となります。
- 間質性肺炎の程度によれば、関節リウマチの治療薬であるメトトレキサートが使用できなくなるなど、治療に制約が生じることがあります。
●-RA(12) 関節外病変(その1) リウマチ結節(リウマトイド結節)
- 関節リウマチは主に関節を侵す病気ですが、関節以外にも病変がみられることがあります。
- リウマチ結節(リウマトイド結節)はその関節外病変の代表的なものとして知られています。
- リウマチ結節は関節リウマチ患者さんの20-30%にみられる皮下結節(皮膚の下のしこり)です。
- 上の写真左のように肘の伸側部によくみられますが、その他にも後頭部や臀部など物理的刺激を受けやすい部位に好発します。
- 関節炎の活動性が高い時に出現しやすいとされています。
- 一般的には痛みなどの症状は少なく、しばらくすると消失することもよくあります。
●-RA(11) 2種類あるリウマチの痛み
- 関節リウマチの関節の痛みには、その原因によって大きく2つの種類があることをご存じでしょうか?
- 上の図をご覧ください。この図は発病した一人の関節リウマチ患者さんを治療せずにその痛みの経過を追った図です。
- 発病初期は関節リウマチの炎症による痛み(赤線)が主体です。患者さんは関節が腫れて痛いという症状を訴えます。例えるとねん挫した足首のような関節といえるでしょう。
- 関節の炎症は徐々にその関節の軟骨や骨の破壊(灰色線)を引き起こしていきます。炎症の痛み(赤線)が骨破壊よる痛み(青線)に置き換わっていきます。
- ただ炎症はいつまでもは続きません。焚火の火が燃える材料(炭や木)が燃え尽きてしまうと弱くなって消えてしまうように、関節の炎症も燃える材料がなくなってしまうとその炎症は終焉に向かいます。
- 炎症の後に残るのは破壊されたことで変形し機能を果たさなくなった関節です。使えなくなった関節を無理に使うことで患者さんは破壊による痛みを感じることになります。
- つまり、関節リウマチでの関節の痛みは、発病早期から中期の炎症による痛み(赤線)と中期から後期にみられる関節の破壊による痛み(青線)の2つに分けることができます。
- この痛みの原因をみきわめることは治療を考える上でも重要で、抗リウマチ薬(csDMARDs, bDMARDs, tsDMARDs)は炎症を抑え込んで炎症による痛みを軽減するとともに、後の骨破壊を防止する効果も期待できます。ただ、破壊による痛みに対する効果は期待できません。
- それに対して、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)とステロイド薬は炎症による痛みにも破壊による痛みにもある程度の効果がありますが、炎症から破壊への進行を食い止める効果は期待できません。
- さて、今あなたの目の前で痛がっているこの患者さんにどの薬を出してあげるのが正解でしょうか?
●-RA(10) 関節破壊の進行について
- 関節リウマチ(RA)では関節の炎症が関節の破壊を引き起こします。
- 見かけ上の関節の変形が発症10年過ぎてからみられることから、左図のように関節の破壊は10年過ぎてから進行していくと従来の予測(左図青線)として考えられていました。
- しかし、関節のX線やMRI画像をよく観察すると、関節破壊の実際の変化(左図赤線)は発症早期から始まっていることが分かってきました。
- これは、左図の点線〇のような発症早期に有効な治療を開始することが関節破壊を防ぐために重要であるということを示しています。
- 右図は発症2年後に抗リウマチ薬の治療を開始したケースです。治療によって関節破壊の進行は止まっていますが(実線⇒点線)、その後も20%を超える関節破壊が残っています。これは、もっと早期に有効な治療薬を開始すべきであったことを示しています。
●-RA(9) 関節MRI検査の威力
- 関節MRI検査は、関節リウマチの早期診断に用いられます。
- 関節の診察や血液検査で、関節リウマチが疑わしいが確定診断に至らない症例があります。
- 発症して早期の関節リウマチは単純X線(上図右)では異常がみられないことが多いですが、
- MRI検査(上図左)では〇で示すように、滑膜炎や、骨髄浮腫と称される骨侵食の前駆状態を検出することができます。
- ただ、MRI検査は手間とコストのかかる検査であるため、丁寧な関節の診察や血液検査で関節リウマチの確定診断に至らない症例に用いられることになります。
- 症例にもよりますが、MRI検査での滑膜炎や骨髄浮腫の経過をみることで治療の有効性の評価に用いられることもあります。
●ーRA(8) 関節の中を覗いてみよう!
正常な関節(左図)
- 関節では骨と骨が向かい合って接しています。
- 骨の先端には軟骨という軟らかい骨がありクッションの働きをしています。
- 軟骨と軟骨の間には少量の関節液があり、関節がスムーズに動くための潤滑油の役割を果たしています。
- その関節液を産生しているのが滑膜で、非常に薄い膜として関節を包むように存在しています。
関節リウマチの関節(右図)
- 関節リウマチの病気は関節の中の滑膜に発症します。
- 滑膜に炎症が起きると増殖して腫れあがってきます。
- 腫大した滑膜によって、近くにある軟骨の破壊、続いて骨の破壊が生じてきます。
- 腫大した滑膜からは過剰な関節液が産生されることもあります(いわゆる「水がたまる」)。
- 滑膜の炎症は治療薬によって改善させることが可能ですが、軟骨や骨の破壊は一般的には不可逆的です。
- したがって、軟骨や骨の破壊がみられる前に適切な治療を開始する必要があります。
●ーRA(7) これが変形性関節症だ! 関節リウマチとのチガイ
- 関節の痛みや腫れを訴える患者さんをみたときは、関節リウマチ(RA)以外に●-RA(3)の表に示した病気を考える必要があります。
- 特にその中で頻度の高い病気が変形性関節症(OA)です。
- 変形性関節症は、軟骨がすり減ってしまい、代わりに骨に骨棘などの増殖性変化がみられる病気です。
- 加齢に加えて、長期間の関節への荷重や関節を頻繁に動かすことがその発症の原因とされています。手指だけでなく、膝(変形性膝関節症)、肩(変形性肩関節症)などにも発症します。
- 写真BとCのように指の関節には、指先からDIP、PIP、MCPという名称がついています。
- 変形性関節症では主にDIP関節が侵され、写真BとCのようにDIP関節に骨棘ができて変形がみられるようになります。
- 変形性関節症はPIP関節にみられることもあり、写真AのようにDIP関節の病変をへバーデン結節(①→)、PIP関節の病変をブシャール結節(➁→)と呼びます。
- 関節リウマチ患者の手です。
- 主にPIPとMCP関節(手首にも)に腫れがみられ、DIPは侵されにくいのが変形性関節症と異なります。
- また、矢印のようにPIP、MCP、手首の腫れの本態は、関節滑膜の炎症であることから触ると柔らかく腫れているのが特徴です。
- 関節リウマチのこの腫れは、変形性関節症と違って破壊と変形に進行していくことが多く、早期の治療が求められます。
●-RA(6) 関節リウマチの治療【3】
関節リウマチの治療薬としてJAK阻害剤が登場して10年(2024年2月現在)が過ぎ、現在5種類の製剤が使用可能です。関節リウマチの症状の改善や活動性の抑制に対する高い臨床効果は既に証明されており、いまや前述の生物学的製剤に匹敵する位置づけにもなっています。すべて経口薬であるということも患者さんに好まれる理由のひとつになっていますが、生物学的製剤と同様に高額な薬剤ではあります。
●-RA(5) 関節リウマチの治療【2】
2003年に点滴製剤として初めて生物学的製剤(bDMARDs)が登場したときは、その劇的な関節炎に対する効果に驚愕したものでした。
その後年々治療薬の種類は増加し、2024年2月現在は左図のようになっており、皮下注射製剤が主流になっています。
分類としては、TNFというサイトカインを阻害する抗TNF薬とIL-6というサイトカインを阻害する抗IL-6薬、そしてT細胞抑制薬になります。
このような多種類の製剤の中から、それそれの患者さんに最適のものを選択することになりますが、うまくいけば関節リウマチの関節炎を寛解に持っていける可能性があります。
●ーRA(4) 関節リウマチの治療【1】
・関節リウマチの診断確定後には、まずメトトレキサート(MTX)の投与を考えます。
・年齢や腎機能の問題でMTX以外の抗リウマチ薬(csDMARDs)が選択されることもあります。
・MTXの効果が不十分な場合は生物学的製剤(bDMARDs)あるいはJAK阻害剤(tsDMARDs)が選択されます。
●ーRA(3) 関節リウマチの診断
関節リウマチの診断について
●-RA(2) 東洋病院リウマチ専門医の紹介
東洋病院の日本リウマチ学会認定の
4名のリウマチ専門医を紹介します
専門医資格 | 医師名 | 外来診察日 |
リウマチ専門医 | 清水 輝記 | 水、木、金、土 |
リウマチ専門医 | 三宅 恵子 | 月、火 |
リウマチ専門医 | 杉田 明美 | 金 |
リウマチ専門医・指導医 | 谷 憲治 | 水、木、金(土) |
・診療日が変更されることもあるので、電話で確認し診察を予約されることをお勧めします