ブログ

2025.09.11

東洋病院 今日の献立

「心にしみる一杯、特製しょうゆラーメンの日」

〜 減塩でもおいしく、身体にやさしいラーメン献立 〜

やさしい味付けと彩りのバランスが、目にも心にも食欲を運んでくれます。病院食というと「味気ない」という印象を持たれがちですが、この献立は家庭的な温かみと栄養バランスの両方が整った一食です。

このお食事は隣接するサービス付き高齢者向け住宅、ショートステイやデイケアでも提供されています。入院中の方だけでなく、在宅生活を送る高齢者や通所利用者様も、同じ美味しさと健康サポートを受けられるのです。

 

今日の病院ごはん

 

本日の献立は、「ご飯(小)」、「特製しょうゆラーメン」、「豆腐の肉あんかけ」、そしてお食事のお供に冷たい麦茶をご用意しました。

ラーメンには、やわらかく煮込まれたチャーシュー、なると、煮卵、青ねぎなどが彩りよく盛り付けられ、病院食とは思えない満足感ある一杯です。豆腐の肉あんかけは、絹ごし豆腐にやさしいとろみのあんがかかり、挽き肉とほうれん草、人参が風味を引き立てています。

栄養から見た元気のひみつ

 

この日の献立は、エネルギー・たんぱく質・ビタミン・ミネラルのバランスが取れた一食です。

まず、ラーメンは炭水化物だけでなく、チャーシューや煮卵で良質なたんぱく質が摂れるよう工夫されています。特にたんぱく質は、筋肉や免疫細胞の材料となる栄養素であり、高齢者におけるフレイル(虚弱)予防にも重要です。また、なるとや青ねぎにはビタミンCやカロテンも含まれ、抗酸化作用も期待されます。

豆腐の肉あんかけは、消化吸収のよい植物性たんぱく質(大豆由来)と、動物性たんぱく質(ひき肉)を組み合わせた理想的な副菜です。とろみをつけることで咀嚼や嚥下がしやすく、誤嚥性肺炎の予防にも配慮された調理法です。

加えて、全体の塩分量は控えめ(約2g未満)に設計されており、高血圧や腎疾患のある方でも安心して食べられる内容です。うまみ成分を活かすことで、塩分を抑えても物足りなさを感じさせないよう工夫しています。

栄養学に基づいたこうした「機能する食事」は、単に満腹感を満たすだけでなく、身体の回復や病気の予防・改善にもつながる大切な医療の一環です。

 

東洋医学からのやさしいまなざし

東洋医学では、食べ物は薬にもなると考えます。本日の献立は、「気(エネルギー)」と「血(栄養)」を養いながら、胃腸の働きを整える構成となっており、季節の変わり目にぴったりの内容です。

とくにしょうゆラーメンの温かいスープは、東洋医学でいう「脾胃(ひい)」を助けるもの。脾は食物を「気」と「血」に変える源とされ、冷たいものや生ものが続くと脾の働きが弱り、疲労感や食欲低下、むくみなどを引き起こすことがあります。温かい汁物は脾を温め、全身の巡りを良くし、体内のバランスを整える助けになります。

また、豆腐は「涼性」の食材として、体にこもった熱を冷まし、穏やかに潤す働きがあります。今の季節には「暑さ疲れ」と「冷房冷え」が同時に起こりやすく、豆腐のように「涼性だけどやさしい」食材が、身体の余分な熱を和らげ、内側から穏やかに整えてくれます。

さらに、豆腐にかけられたとろみのあるあんかけは、五臓のうち「腎」にもやさしく、エネルギーを蓄える働きにもつながるとされます。

このように、食材の「性質(五性)」や「味(五味)」を活かして季節に応じた食事をとることは、東洋医学における食養生の基本です。日々の食事が、薬に勝る力を持つと考える理由は、まさにここにあります。

 

薬膳の豆知識

薬膳では、食材を「五味(ごみ)」「五性(ごせい)」「帰経(きけい)」などの視点から分類し、体質や季節に合わせて選びます。本日の献立にも、薬膳的に意味のある食材が多く含まれています。

しょうゆラーメンのスープ

ラーメンのスープは、「温性」に分類され、身体を内側から温める働きがあります。温かい汁物は脾(ひ)の働きを助け、消化吸収を高めるとされます。さらに、だしに使われる昆布やかつお節は「うまみ=グルタミン酸・イノシン酸」が豊富で、これが減塩でも満足感のある味に繋がっています。

煮卵

卵は「平性」で、冷やしもせず温めもせず、体を中庸な状態に保つ食材です。「気」「血」「精(せい)」を養うとされ、疲労回復や滋養強壮に適しています。

豆腐の肉あんかけ

  • 豆腐:五味は「甘」、五性は「涼」。身体の熱を鎮め、潤いを与える食材。暑さによるのぼせ乾燥に効果的です。
  • ひき肉(鶏・豚など):たんぱく質源として「気」を補う作用があり、体力低下や倦怠感の回復に向いています。
  • 人参・ほうれん草:人参は「補気(ほき)」の代表食材で、体力をつける力があります。ほうれん草は「血」を補い、目の疲れや肌の乾燥にも良いとされます。

 

ご飯(小)

ご飯は「甘味」で「平性」。脾を養い、体にエネルギー(気)を与える主食として、薬膳ではとても大切な存在です。

このように、薬膳は「病気を治すための特別な食事」というより、毎日の献立に無理なく取り入れられる体を整える知恵です。体質や季節に合わせた選び方をすることで、日々の食事が自然なかたちで健康を支えてくれます。

 

栄養士さんより心に響く一言

「ラーメン=塩分が多い、というイメージがあるかもしれません。でも当院では、塩分はわずか1g程度に抑えながらも、昆布やかつおのうまみ成分を活かして、満足感のある味に仕上げました。減塩が必要な方でも安心して楽しめるよう、味つけ・具材・バランスのすべてに工夫を凝らした、自信作です。食べる喜びを大切に、これからもおいしい病院食をお届けしていきます。」

 

おわりに

まだまだ暑さが続きますが、温かい汁物を食べることで、胃腸の働きが整いやすくなります。冷たいものばかりで疲れた体を、やさしい食事で内側から癒していきましょう。無理のない範囲で、ゆっくり召し上がってくださいね。

晩夏の光がやわらかくなる頃、食事から体調を整えることが大切です。皆さまの健康と穏やかな日々を、心よりお祈り申し上げます。

 

【注釈】

各個人様にお出しするお食事は、体の状態や医師の指示により内容が変更される場合がございます。あらかじめご了承ください。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状や治療については必ず主治医にご相談ください。

関連施設

  • 東洋病院通所リハビリテーション
  • グループホーム千寿園
  • ショートステイ幸鈴園
  • サービス付き高齢者向け住宅幸鈴園
  • 東洋病院 在宅ケアセンターヘルスパーク