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2025.10.20

東洋病院 今日の献立 第10回

「やさしい粘りで元気を補う日」おはぎとまぐろの山かけ御膳

 

やさしい味付けと彩りのバランスが、目にも心にも食欲を運んでくれます。病院食というと「味気ない」という印象を持たれがちですが、当院の献立は家庭的な温かみと栄養バランスの両方が整った一食です。

このお食事は隣接するサービス付き高齢者向け住宅、ショートステイやデイケアでも提供されています。入院中の方だけでなく、在宅生活を送る高齢者や通所利用者様も、同じ美味しさと健康サポートを受けられるのです。

 

① 今宵の小さな食卓だより

本日の献立は、おはぎ/まぐろのやまかけ/味噌汁/煮物/いんげんの梅びしろかけです。

味噌汁は香りのよいだしで、塩分は控えめでもうま味を感じられる仕立てにしました。煮物はやわらかく煮含め、口の中でほろりとほどけます。いんげんは梅のほどよい酸味でさっぱりと。主菜のまぐろは、とろろを合わせてするりと食べやすくしています。甘味は小ぶりのおはぎをひとつ。食後の楽しみとして、やさしい甘さで気持ちも落ち着きます。

全体として噛みやすく、のどを通りやすい料理をそろえ、温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たく、食べやすい温度で提供します。

② 一皿ずつ重ねる、元気の種

今日の主役はまぐろの山かけです。まぐろには良質なたんぱく質と鉄が多く含まれ、筋力の維持や貧血の予防に役立ちます。とろりとした山芋はのど通りを良くしてくれるので、食欲が落ちたときや噛む力が気になるときでも食べやすい一品になります。いんげんや煮物の野菜、そしておはぎのあんこには食物繊維があり、腸の動きを整えてお通じを助けます。味噌汁は温かい水分をとりながら、少量の塩分やミネラルも補えます。汗ばむ季節には、減塩のだしでも十分に味を感じられるよう工夫しています。

たんぱく質は、筋肉や内臓、皮ふ、髪、血液など体の材料になるだけでなく、酵素やホルモン、免疫の働きのもとにもなります。年齢とともに筋肉は減りやすく、足りないと疲れやすさや感染症のリスク上昇につながります。魚や肉、卵や大豆製品を三食に分けてこつこつとることが、毎日の体力づくりの土台になります。この献立は、その一助となるよう設計しています。

なお、生のまぐろは体調や治療内容を確認し、召し上がってよい方にのみ提供しています。免疫が下がっている方、妊娠中の方、主治医から生ものを控えるよう言われている方は、必ず個別にご相談ください。ここに示した量はあくまで目安であり、病気や治療、年齢によって適量は変わります。気になる点があれば、必要に応じて主治医や管理栄養士にご相談ください。

 

③ 季節とからだを結ぶ、医のまなざし

晩夏から初秋は、暑さの名残と朝晩のひんやりが重なり、胃腸がゆらぎやすい時季です。東洋医学では消化の要を「脾(ひ)」と呼び、今の時季はこの脾をいたわる養生が大切だと考えます。山芋は弱った胃腸をそっと支える食材、梅のやさしい酸味は失いがちな水分を体の中にとどめる働きがある——そんな比喩で語られてきました。温かい味噌汁とやわらかい煮物を合わせることで、お腹を内側からほどよく温める構成になり、食欲の戻りを静かに後押しします。冷たい飲み物や一気食いは控え、温かい汁物を一口ずつ、よく噛んでいただくと胃の負担が減ります。

この季節の普段の食事は、白米やお粥などの穀類、山芋・さつまいも・かぼちゃなどの芋類、にんじん・とうもろこし・ブロッコリー・冬瓜といった甘みのある野菜、きのこ、そして鶏肉や豚肉、鮭やかつおなど脂ののった魚を少量ずつ組み合わせると、消化にやさしく体力の回復を助けます。豆腐や納豆、ヨーグルト、卵も取り入れやすい食材です。果物は梨やりんご、ぶどうなどを食後に少し。ごまや栗、はちみつは風味づけ程度に使うと満足感が増します。調理は、煮る・蒸す・とろみをつけるなど、歯ぐきでつぶせる硬さが目安です。

ここでの東洋医学や薬膳の表現は、体調をととのえるヒントとしての比喩であり、医学的判断を置き換えるものではありません。塩分や糖分、たんぱく質の制限がある方、嚥下に不安のある方は量や食材に調整が必要です。迷ったときは、必要に応じて主治医や管理栄養士にご相談ください。

 

④ 今日を心地よく過ごす小さな工夫

おはぎは小さめにして、一口ずつゆっくり味わいましょう。むせやすい方は、お茶や味噌汁で少し湿らせてから飲み込みます。入れ歯をご使用の方は安定しているか食前に確認してください。血圧やむくみが気になる方は味噌汁をまず一口、塩加減を確かめてから量を決めましょう。血糖が気になる方は甘味を半量にしても満足感は続きます。食後はゆっくり休み、急に横にならないことがむせ防止に役立ちます。薬との飲み合わせや食前・食後のタイミングは、指示どおりに。体調の変化、飲み込みの不安、体重の急な増減があるときは、必要に応じて主治医や管理栄養士にご相談ください。

 

⑤季節の風にのせる結びの言葉

朝夕の風が心地よくなる頃です。あたたかい食事で体をいたわり、どうぞ無理せずお過ごしください。皆さまの健康をお祈りします。

 

【注釈】

各個人様にお出しするお食事は、体の状態や医師の指示により内容が変更される場合がございます。あらかじめご了承ください。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状や治療については必ず主治医にご相談ください。

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