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2025.11.10

東洋病院 今日の献立 第13回

秋の実りをいただくうなぎと五穀ご飯

やさしい味付けと彩りのバランスが、目にも心にも食欲を運んでくれます。病院食というと「味気ない」という印象を持たれがちですが、当院の献立は家庭的な温かみと栄養バランスの両方が整った一食です。

このお食事は隣接するサービス付き高齢者向け住宅、ショートステイやデイケアでも提供されています。入院中の方だけでなく、在宅生活を送る高齢者や通所利用者様も、同じ美味しさと健康サポートを受けられるのです。

 

  • ①からだにやさしい本日の一膳

本日の病院食は、うなぎの蒲焼き添え五穀ご飯を主菜に、煮物、きゅうりとわかめの酢の物、お麩入りの味噌汁、そしていちごミルクゼリーが並びました。
五穀ご飯には、もちきび・もちあわ・大麦・アマランサス・ごまを混ぜ込み、ほんのりとした甘みと香ばしさが広がります。やわらかく焼き上げたうなぎの照りが美しく、ご飯の上で季節の彩りを添えています。 

  • ②エネルギーと栄養のバランス解説

うなぎは、ビタミンAB群・DEを多く含み、疲れをやわらげ、皮膚や粘膜の健康を保つ助けになります。季節の変わり目は胃腸が弱りやすい時期ですが、うなぎの栄養はエネルギーのめぐりを整え、体の内側から元気を支えてくれます。五穀ご飯には食物繊維とミネラルが豊富で、血糖値の上がり方をゆるやかにする働きがあります。酢の物のほどよい酸味は食欲を引き出し、消化を助けてくれます。デザートのゼリーは見た目にも優しく、果汁を使えばビタミンCの補給にもなります。

酢を使った料理(酢の物)は、昔から体に良いとされてきました。最近の研究でも、酢に含まれる酢酸には多くの健康効果があることが確かめられています。たとえば、酢をとると唾液や胃液の分泌が増え、食欲や消化がよくなります。また、食事中に少量の酢を摂ることで、食後の血糖値が急に上がりにくくなることも報告されています。さらに、酢酸には血管をやわらげる働きがあり、血圧の上昇をゆるやかにする効果もあるといわれています。

日本人を対象にした研究では、40歳以上の方で酢の物を月に1回以上食べる人は、まったく食べない人に比べて血圧がやや低い傾向がありました。また、酢酸を大さじ1杯(約15ml)ほど含む飲み物を10週間続けて摂取した試験では、最高血圧が平均7mmHgほど、最低血圧が6mmHgほど下がったという結果もあります。これらはあくまで平均的な目安であり、血圧が高めの方ほど効果が出やすいとされています。

酢の風味を上手に使うと、塩分を控えてもおいしく味付けでき、減塩にもつながります。毎日少しずつ、たとえば酢の物やドレッシングなどで摂るとよいでしょう。ただし、酢の取りすぎは胃を刺激することもありますので、体調に合わせて無理のない範囲で取り入れてください。気になる点や持病がある場合は、必ず主治医にご相談ください。

 

  • ③季節と食養生—本日のメニューを読み解く

東洋医学では、秋は「肺」と「皮膚」を養う季節といわれています。空気が乾燥してくるこの時期は、呼吸器やお肌の潤いを保つことが大切です。うなぎは、体の内側から潤いを与える働きがあるとされ、季節の変わり目にぴったりの食材です。また、雑穀のやさしい甘味は、胃腸の調子を整え、心身を穏やかに保つ助けになります。

東洋医学には「五行説(ごぎょうせつ)」という考え方があります。自然界のあらゆるものを「木・火・土・金・水」に分け、それぞれの季節や臓器に対応させるものです。秋は「金」に属し、「肺」と「大腸」が深く関係するとされています。秋は空気が乾きやすく、体も乾燥しやすくなるため、東洋医学では「燥邪(そうじゃ)」という気候の変化が体に悪影響を与えると考えられています。肺は潤いを好む臓器であり、乾燥が強くなると咳やのどの痛み、肌のかさつき、鼻づまり、便秘などが起こりやすくなります。また、肺は悲しみや憂いといった感情とも深く結びついているため、気分が沈みがちな時期でもあります。

古くからの医書『黄帝内経(こうていだいけい)』にも、秋は外に向かうエネルギーを内に収め、体を守る季節と書かれています。つまり、心と体を静かに整える時期なのです。

この季節におすすめの食材は、白色で水分を多く含むものです。たとえば梨、れんこん、百合根、白きくらげ、松の実、白ごまなどがあります。山芋や大根、白菜、豆乳、豆腐、はちみつなども潤いを補ってくれます。これらの食材は喉や肌を守り、乾燥から体を優しく支えてくれます。

また、肺を守る代表的な漢方薬として、麦門冬湯(ばくもんどうとう)や潤肺湯(じゅんぱいとう)、百合固金湯(びゃくごうこきんとう)などがあります。これらは咳やのどの乾燥をやわらげる目的で使われます。玉屏風散(ぎょくへいふうさん)は、風邪をひきやすい方や免疫を整えたい方に用いられることがあります。

秋の養生では、白くて潤いのある旬の食材を意識し、呼吸器や肌を乾燥から守ることが大切です。もし肺や喉の不調が気になるときや、漢方薬のご相談を希望される場合は、どうぞお気軽に受診ください。気になる点がある方は、必ず主治医にご相談くださいね。

 

  • ④食卓からの小さなエール

気温差で体調を崩しやすい時期です。冷たい飲み物は避け、温かい汁物で胃腸をいたわりましょう。うなぎや雑穀など、体力維持に役立つ食材を少しずつ食事に取り入れることで、健康を保ちやすくなります。

 

  • ⑤皆さまの健やかな毎日に寄せて

秋風が肌に心地よい季節。どうぞ温かいお食事で、心身ともに穏やかな日々をお過ごしください。

 

【注釈】

各個人様にお出しするお食事は、体の状態や医師の指示により内容が変更される場合がございます。あらかじめご了承ください。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状や治療については必ず主治医にご相談ください。

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