具だくさんチキンカレーで心と体に栄養を
やさしい味付けと彩りのバランスが、目にも心にも食欲を運んでくれます。病院食というと「味気ない」という印象を持たれがちですが、当院の献立は家庭的な温かみと栄養バランスの両方が整った一食です。
このお食事は隣接するサービス付き高齢者向け住宅、ショートステイやデイケアでも提供されています。入院中の方だけでなく、在宅生活を送る高齢者や通所利用者様も、同じ美味しさと健康サポートを受けられるのです。
① からだにやさしい本日の一膳
皆様、こんにちは。当院の管理栄養士が工夫を凝らした、具だくさんチキンカレーを中心とした献立をご紹介いたします。
今日の主役は、ごろごろとした具材がたっぷり入った、特製のチキンカレーです。鶏肉は、脂肪分が比較的少なく、良質なたんぱく質が豊富です。このたんぱく質は、私たちの体をつくる基本となる大切な栄養素です。
写真で見ても分かるように、人参、じゃがいも、玉ねぎといったおなじみの野菜に加えて、ほうれん草やコーン、きのこ類など、彩り豊かな食材が溶け込んでいます。様々な種類の野菜を使うことで、それぞれの持つ栄養素をバランスよく摂ることができます。野菜の甘みが溶け出し、スパイスの香りと合わさって、食欲をそそるマイルドな味わいに仕上がっています。
付け合わせには、クリーミーなマカロニサラダを添えました。マカロニは、エネルギー源となる炭水化物を含み、じゃがいもや人参、グリーンピースなどの野菜と合わせることで、満足感がありながらも、不足しがちなビタミンや食物繊維を補うことができます。
箸休めの福神漬けや、デザートのフルーツポンチも、食後の満足感を高めてくれます。特にフルーツポンチは、さっぱりとしていて、消化を助け、食欲がない時でも食べやすい工夫の一つです。
②エネルギーと栄養のバランス解説
この献立の大きな栄養学的なポイントは、「バランスの良さ」と「消化のしやすさ」にあります。
- ・エネルギー源とたんぱく質の確保：ご飯（炭水化物）は体の活動に必要なエネルギー源となり、チキン（たんぱく質）は、筋肉や皮膚、免疫細胞など、体をつくる材料になります。病気と闘うためにも、良質なたんぱく質をしっかり摂ることが大切です。
- ・ビタミン・ミネラルの補給：カレーに入っているたくさんの野菜や、マカロニサラダの具材、デザートのフルーツからは、ビタミンやミネラル、食物繊維が一度に摂取できます。これらの栄養素は、体の調子を整え、免疫機能をサポートする重要な役割を担っています。特に、野菜に含まれる抗酸化作用のある成分は、体の老化を防いだり、病気から守ったりすると言われています。
- ・スパイスの力で食欲アップ：カレーのスパイスには、単に風味を良くするだけでなく、食欲を増進させたり、消化液の分泌を促す働きがあることが知られています。また、体を温める作用を持つスパイスも多く、特に寒い時期や、体調が優れず食が進まない時にもおすすめです。
当院の病院食は、一食で必要な栄養素を過不足なく摂れるよう、管理栄養士が計算して作られています。特に、手術後の回復期や病気の治療中は、食事がそのまま「お薬」のような役割を果たします。おいしく、楽しく食べていただくことが、回復への第一歩になると信じております。
③ 季節と食養生—本日のメニューを読み解く
西洋医学的な栄養の観点に加えて、東洋医学的な視点からも、この献立の良さを見てみましょう。東洋医学では、季節や体質に合わせた食事を大切にします。
カレーに含まれるスパイスは、東洋医学では「温性（体を温める性質）」を持つものが多いとされています。体を温めることは、気の巡りや血の巡りを良くし、冷えからくる不調を和らげるのに役立つと考えられています。特に、冷えを感じやすい方や、胃腸の働きが弱っている方にとって、温かいカレーは優しく体を受け止めてくれるでしょう。
また、東洋医学では、食べ物の色や味が持つ「五味五色」の考え方も重要です。
- ・カレーの黄色の元となるウコン（ターメリック）などは、東洋医学でいう「脾（消化器系）」の働きを助けるとされています。
- ・具材の緑黄色野菜は、体のバランスを整える作用があると考えられています。
このように、カレーは単なる食事としてだけでなく、「食べる漢方」のような側面も持っているのです。補助的な考え方として、日々の食卓に取り入れることで、体の内側から調子を整える手助けになるかもしれません。ただし、これらの考え方は治療に代わるものではなく、日々の体調管理の補助的なものとしてお考えください。
④ 食卓からの小さなエール
ご高齢の皆様にとって、食事は単に栄養を摂るだけでなく、生きる喜びや楽しみの一つでもあります。
季節の変わり目や、体調が優れない時は、食欲が落ちてしまうことも少なくありません。そんな時こそ、この具だくさんのチキンカレーのように、一皿で多くの栄養が摂れる工夫が大切になります。鶏肉は、比較的柔らかく消化しやすいたんぱく質源です。野菜も小さめにカットし、じっくり煮込むことで、咀嚼（そしゃく）や嚥下（えんげ）がしやすいように配慮されています。
- ・食欲がない時：カレーの香りは、食欲を刺激します。無理に全部食べようとせず、まずは一口から、ゆっくりと味わってみてください。ご飯の量を調節したり、とろみを工夫したりすることで、より食べやすくなることもあります。
- ・乾燥や寒さの不調：特に乾燥する季節は、風邪を引きやすくなります。野菜に含まれるビタミンAやCは、粘膜を保護し、免疫力を保つために重要です。温かいカレーをゆっくり食べることで、体の内側から温め、抵抗力を高める助けになるでしょう。
当院では、皆様の体調に合わせて、きざみ食やペースト食など、形態の変更にも対応しております。何か食べにくい点や、ご希望がありましたら、遠慮なく担当の看護師や管理栄養士にご相談ください。皆様が安心して、心ゆくまでお食事を楽しめるよう、私たちは全力でサポートいたします。
⑤ 皆さまの健やかな毎日に寄せて
夜風が肌寒く感じられる季節となりました。皆様におかれましては、どうぞ暖かくしてお過ごしください。
このチキンカレーのように、心も体も温まるお食事を通じて、皆様の健康がさらに増進し、穏やかな日々が続くことを心よりお祈り申し上げます。
【注釈】
各個人様にお出しするお食事は、体の状態や医師の指示により内容が変更される場合がございます。あらかじめご了承ください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状や治療については必ず主治医にご相談ください。
