寒さに負けない体づくりを。栄養たっぷりの洋食メニューをご紹介します。
やさしい味付けと彩りのバランスが、目にも心にも食欲を運んでくれます。病院食というと「味気ない」という印象を持たれがちですが、当院の献立は家庭的な温かみと栄養バランスの両方が整った一食です。
このお食事は隣接するサービス付き高齢者向け住宅、ショートステイやデイケアでも提供されています。入院中の方だけでなく、在宅生活を送る高齢者や通所利用者様も、同じ美味しさと健康サポートを受けられるのです。
① からだにやさしい本日の一膳
皆様、こんにちは。 病院の厨房から、今日の昼食のご紹介をさせていただきます。 窓の外の風が少しずつ冷たくなり、冬の気配を感じる季節になりました。 そんな時期だからこそ、食事の時間には心温まるような洋食メニューをご用意いたしました。
本日のメインは、「白身魚のフライとクリームコロッケ」です。 お皿には、サクッと香ばしく揚げた白身魚のフライと、中はとろりとしたクリームコロッケを盛り合わせています。 上にはまろやかな特製ソースをかけ、さらに赤や黄色のパプリカを添えて彩りよく仕上げました。 白いソースと鮮やかな野菜のコントラストが、食欲をそそる一品です。
副菜には、「ほうれん草のピーナッツあえ」をご用意しました。 茹でて柔らかくなったほうれん草に、香ばしいピーナッツの風味をまとわせています。 シャキシャキとした野菜の食感と、ナッツのコクがよく合います。
汁物は、野菜の甘みが溶け込んだ優しい味わいの「コンソメスープ」です。 そして、お口直しにはさっぱりとした「フルーツの盛り合わせ」をデザートにお付けしました。
ご飯、主菜、副菜、汁物、そしてデザート。 味のバランスはもちろんのこと、目で見ても楽しんでいただけるよう工夫を凝らした献立となっております。

② エネルギーと栄養のバランス解説
さて、ここからは少し栄養学的な視点でお話ししましょう。 今日のメニューには、体を元気に保つための大切な栄養素がたくさん詰まっています。
まず、メインの「白身魚」についてです。 白身魚は、良質なタンパク質を豊富に含んでいます。 タンパク質は、私たちの筋肉や皮膚、内臓を作るための材料となる大切な栄養素です。 特にご高齢の方や、体調を崩されている方にとっては、体力の維持・回復のために欠かせません。 白身魚は脂質が控えめで、消化吸収が良いとされています。 そのため、胃腸への負担を抑えながら、しっかりと栄養を摂ることができる優れた食材なのです。
次に、副菜の「ほうれん草」に注目してみましょう。 ほうれん草は「緑黄色野菜の王様」とも呼ばれるほど、栄養価が高いことで知られています。 特に注目したいのは、ベータカロテンやビタミンCです。 これらは、体のサビつきを防ぐ抗酸化作用が期待できると言われています。 また、ほうれん草に含まれるビタミン類は、油と一緒に摂ることで吸収率が高まるという性質があります。 今回はピーナッツの良質な脂質と一緒に和えることで、効率よく栄養を取り入れられるよう工夫しています。
そして、「クリームコロッケ」に使われる乳製品には、骨や歯を丈夫にするカルシウムが含まれています。 いろいろな食材を少しずつ食べることで、お互いの栄養素が助け合い、体への効果を高めてくれるのです。 「おいしい」と感じながら食べることが、消化を助け、栄養を体に行き渡らせる一番の近道でもあります。
そして、デザートの「フルーツポンチ」で果物を摂ることも大切です。 果物に含まれる果糖は、速やかにエネルギーに変わるため、食後の疲労回復に役立つと言われています。 いろいろな食材を少しずつ食べることで、お互いの栄養素が助け合い、体への効果を高めてくれるのです。
③ 季節と食養生—本日のメニューを読み解く
ここからは、少し視点を変えて、東洋医学や季節との関わりについてお話ししたいと思います。 暦の上では冬が近づき、朝晩の冷え込みが厳しくなってくる頃です。 東洋医学の考え方では、この時期は「寒邪(かんじゃ)」といって、寒さが体に入り込みやすくなるとされています。 体が冷えると、どうしても免疫力が下がりやすくなったり、古傷が痛んだりといった不調が出やすくなります。
そんな季節の変わり目に大切なのは、やはり「体を内側から温めること」です。 本日の献立にあるコンソメスープのような温かい汁物は、ただ体を温めるだけでなく、胃腸の働きを助けてくれます。 東洋医学では「胃腸は気(エネルギー)を生み出す源」と考えます。 お腹が温まり、しっかりと消化活動ができるようになると、全身にエネルギーが巡り、寒さに負けない抵抗力が養われるのです。
また、東洋医学には「旬のものを食べることが、その季節に適応する力を養う」という考え方があります。 今日のメニューに使われている根菜類やほうれん草は、大地にしっかりと根を張り、栄養を蓄えた食材です。 これらをいただくことは、大地のエネルギーを体に分けてもらうことにもつながります。
さらに、「食べる楽しみ」は心の健康にも直結します。 「おいしそうだな」「きれいだな」と心が動くとき、私たちの脳内では幸せホルモンが分泌されると言われています。 心と体はつながっています。 食事が楽しみになれば、気持ちが前向きになり、それが自然治癒力を高める助けにもなるのです。 今日の洋食メニューが、皆様の心に少しでも明るい灯をともすことができれば、医師としてこれほど嬉しいことはありません。
④ 食卓からの小さなエール
入院生活や療養生活を送られているご高齢の皆様へ、食事の際のアドバイスを少しだけお伝えします。
まず、「よく噛んで食べる」ことを意識してみてください。 年齢を重ねると、どうしても飲み込む力が弱くなったり、唾液の量が減ったりすることがあります。 一口につき30回噛むのが理想と言われますが、回数にこだわらなくても構いません。 いつもより少しゆっくり、食材の味や香りを感じながら噛んでみてください。 よく噛むことで唾液がたくさん出ると、消化が良くなるだけでなく、お口の中を清潔に保つ効果も期待できます。
また、これからの季節は、知らず知らずのうちに「隠れ脱水」になりやすい時期でもあります。 夏場と違って喉の渇きを感じにくいため、水分の摂取量が減ってしまいがちなのです。 食事の際のスープやお茶も、大切な水分補給の一つです。 温かいお茶をゆっくりと飲むことは、水分を補うと同時に、気分を落ち着かせるリラックス効果もあります。
もし、食欲がない日があっても、ご自身を責めないでくださいね。 体調には波があるのが自然なことです。 「今日はデザートだけ食べてみようかな」 「スープだけ飲んでみようかな」 そんなふうに、ご自身の体の声に耳を傾けながら、無理のない範囲で食事の時間を過ごしていただければと思います。
⑤ 皆さまの健やかな毎日に寄せて
冬の足音が聞こえてくる季節ですが、温かい食事と笑顔で、心と体をポカポカにして過ごしていきましょう。 皆様が今日という一日を、健やかに、そして穏やかに過ごせますよう、心よりお祈り申し上げます。
【注釈】
※各個人様にお出しするお食事は、体の状態や医師の指示により内容が変更される場合がございます。あらかじめご了承ください。
※本記事は一般的なお話であり、個々の診断や治療に代わるものではありません。食事制限や気になる症状がある場合は、必ず主治医や担当スタッフにご相談ください。

















