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2025.12.15

東洋病院 今日の献立 第18回

季節の食卓便り 〜旬の魚と根菜で、健やかな冬の体づくりを〜

 

やさしい味付けと彩りのバランスが、目にも心にも食欲を運んでくれます。病院食というと「味気ない」という印象を持たれがちですが、当院の献立は家庭的な温かみと栄養バランスの両方が整った一食です。

このお食事は隣接するサービス付き高齢者向け住宅、ショートステイやデイケアでも提供されています。入院中の方だけでなく、在宅生活を送る高齢者や通所利用者様も、同じ美味しさと健康サポートを受けられるのです。

 

こんにちは。 日ごとに寒さが増し、温かいお茶が恋しい季節となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

当院のブログをご覧いただき、ありがとうございます。 入院中の患者様にとって、毎日の食事は治療の一環であるとともに、生活の中での「一番の楽しみ」でもあります。 厨房スタッフと栄養科が心を込めてご用意した、本日の昼食をご紹介させていただきます。

今回は、冬の味覚を代表する「ぶり大根」をメインにした、心なごむ和食の献立です。

からだにやさしい本日の一膳

お膳に並んだ料理からは、出汁(だし)のふんわりとした良い香りが漂ってきます。 今日のメニューは、以下の通りです。

  • ・ご飯(ふっくらと炊き上げた白米)
  • ・ぶり大根(あめ色に煮込まれた大根と、ふっくらしたブリ)
  • ・ひじきのサラダ(お豆と根菜が入った、まろやかな和え物)
  • ・お味噌汁(青菜とお豆腐のやさしい味わい)
  • ・フルーツゼリー(食後のさっぱりとした甘み)

 

メイン料理である「ぶり大根」は、家庭料理としても親しまれている一品ですね。 写真からも伝わるように、大根にはしっかりと味が染み込んでおり、箸を入れるとすっと切れる柔らかさに仕上がっています。 添えられた絹さやの緑色が、彩りのアクセントになっています。 副菜には、ひじきとお豆、そしてレンコンなどを合わせたサラダをご用意しました。 煮物になりがちなひじきですが、今回はクリーミーな和え衣でサラダ仕立てにし、酸味とコクのバランスを楽しんでいただけるよう工夫しています。

エネルギーと栄養のバランス解説

さて、ここからは少し医師の視点で、今日の献立がどのように皆さんの体の力になるかをお話ししましょう。

まず注目したいのは、やはりメインの「ブリ(鰤)」です。 ブリのような青魚には、良質なタンパク質はもちろんのこと、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)といった「オメガ3脂肪酸」が豊富に含まれているといわれています。 これらの成分は、血液の流れをスムーズにしたり、血管の健康を保ったりする働きが期待されています。 「魚の脂」と聞くと敬遠される方もいらっしゃるかもしれませんが、これらは人間の体内で作ることができない大切な栄養素ですので、食事から積極的に摂っていただきたいものです。

そして、そのブリと一緒に煮込まれている「大根」。 大根には、消化を助ける酵素や食物繊維が含まれているとされています。 脂の乗った魚と一緒に食べることで、胃腸への負担を和らげ、消化吸収をスムーズにしてくれるという、非常に理にかなった組み合わせなのです。 先人の知恵というのは、医学的に見ても素晴らしいものだと改めて感じさせられます。

また、副菜の「ひじきのサラダ」に入っている大豆やひじきには、カルシウムやマグネシウムといったミネラル、そして食物繊維が含まれています。 これらは、日本人が不足しがちな栄養素といわれており、骨を丈夫にしたり、お通じを整えたりするために役立ちます。

季節と食養生—本日のメニューを読み解く

ここからは少し視点を変えて、東洋医学的な「季節の養生」という考え方についても触れてみたいと思います。

東洋医学には「身土不二(しんどふじ)」や「旬」を大切にする考え方があります。 その季節に採れる食材は、その季節の体が求めている働きを持っているとされているのです。

冬は、寒さによって体の巡りが滞りやすくなる季節です。 ブリは冬に旬を迎え、脂が乗って栄養価が高まります。 また、大根やレンコンといった「根菜類(土の中で育つ野菜)」は、東洋医学的な考え方では、体を内側から温める性質があるといわれています。

今日の献立にある、煮込んだ大根、お味噌汁、そして温かいお茶。 これらを取り入れることは、単に空腹を満たすだけでなく、冷えた体を芯から温め、「気(き)」と呼ばれるエネルギーを巡らせることにつながります。 病院での食事は、どうしても塩分が控えめになりますが、その分、出汁の旨味や旬の食材が持つパワーを活かすことで、満足感を高めるように工夫されています。 薄味に感じることもあるかもしれませんが、それは素材本来の味を舌で感じる練習にもなり、体に優しい食習慣を身につける良い機会でもあります。

食卓からの小さなエール

ご高齢の患者様におかれましては、日によって食欲がわかなかったり、硬いものが食べにくかったりすることもあるかと思います。

今回の「ぶり大根」は、長時間じっくりと煮込むことで、魚の身も大根も、歯茎で崩せるほどの柔らかさに仕上げています。 魚のパサつきが気にならないよう、煮汁をふくませてしっとりとさせていますので、飲み込みに不安がある方にも召し上がっていただきやすいかと思います。

もし、全部食べるのが大変だと感じたら、まずは「主菜の魚をひと口」と「ご飯をひと口」、交互にゆっくりと召し上がってみてください。 「噛む」という行為は、脳への血流を増やし、覚醒リズムを整えることにもつながります。

また、最後についている「フルーツゼリー」も大切な役割を持っています。 ご高齢になると、喉の渇きを感じにくくなり、知らず知らずのうちに水分不足になることがあります。 つるりとしたゼリーは、喉ごしが良く、食事の最後に口の中をさっぱりさせると同時に、無理なく水分を補給する手助けをしてくれます。 甘いものは心の栄養でもありますから、食後の楽しみとして味わってくださいね。

皆さまの健やかな毎日に寄せて

食事は、体を作る材料であると同時に、心を満たす時間でもあります。 入院生活という非日常の中にありながらも、お膳を通して季節の移ろいを感じ、少しでも「ほっ」とする瞬間を持っていただければ、医師として、これほど嬉しいことはありません。

寒さが本格化してまいりますが、しっかりと栄養を摂り、体を温かくして、この冬を健やかに乗り切っていきましょう。 私たち医療スタッフも、食事を通じて皆様の回復を全力でサポートしてまいります。

明日もまた、美味しい食事が皆様のもとに届きますように。

【注釈】

※各個人様にお出しするお食事は、体の状態や医師の指示により内容が変更される場合がございます。あらかじめご了承ください。

※本記事は一般的なお話であり、個々の診断や治療に代わるものではありません。食事制限や気になる症状がある場合は、必ず主治医や担当スタッフにご相談ください。

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