春の七草で、心と体を温めるひとときを
やさしい味付けと彩りのバランスが、目にも心にも食欲を運んでくれます。病院食というと「味気ない」という印象を持たれがちですが、当院の献立は家庭的な温かみと栄養バランスの両方が整った一食です。
このお食事は隣接するサービス付き高齢者向け住宅、ショートステイやデイケアでも提供されています。入院中の方だけでなく、在宅生活を送る高齢者や通所利用者様も、同じ美味しさと健康サポートを受けられるのです。

① からだにやさしい本日の一膳
寒さが一段と厳しい時期ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。 本日の病院食は、一年の無病息災を願う、この季節ならではの特別メニューをご用意いたしました。 お正月気分を少しでも味わっていただけるよう、彩りや季節感にこだわった献立です。
まずは、主役の「七草粥(ななくさがゆ)」です。 写真の中央左にある、優しい緑色が混ざったお粥です。 せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ。 春の七草を細かく刻んで炊き込み、口当たり良く仕上げました。 隣にはふっくらと炊き上げた「白米」も添えており、お粥の優しさと、ご飯の確かな満足感の両方を楽しんでいただける構成になっています。
右上のお皿は「新春炊き合わせ」です。 お出汁をたっぷりと含んだ大根、食感の良いタケノコ、そして旨味のあるお魚を丁寧に煮込みました。 上に添えた絹さやの緑が、春の訪れを予感させてくれますね。
その下にあるのは「花野菜のサラダ」です。 ブロッコリーとカリフラワーという、花のつぼみを食べる野菜たちを、さっぱりとした味付けで和えました。 コリコリとした食感が、お食事の良いアクセントになります。
右下のお椀は「すまし汁」です。 可愛らしい梅の花の形をしたお麩(ふ)が浮かんでいます。 蓋を開けた瞬間に、ふわっとお出汁の香りが広がり、目でも香りでも楽しんでいただける一品です。
そして、お食事の最後には、左上の「デザート」をご用意しました。 優しい甘さの小豆(あずき)のデザートです。 お食事の締めに、ほっと一息ついていただければと思います。
② エネルギーと栄養のバランス解説
今日の献立には、冬の体に嬉しい栄養のポイントがたくさん詰まっています。
まず、七草粥には、冬に不足しがちなビタミンが豊富に含まれています。 七草に使われる青菜には、ビタミンCやミネラルが多く含まれていると言われています。 これらは、風邪をひきにくい体を作る手助けをしてくれる栄養素です。 また、お粥という形にすることで水分も一緒に摂れますから、乾燥しがちな冬の水分補給としても優れています。
「炊き合わせ」に入っているお魚は、良質なタンパク源です。 タンパク質は、私たちの筋肉や血液を作るために欠かせない材料です。 特に冬場は運動量が減り、筋肉が落ちやすくなると言われていますので、お魚やお肉、大豆製品などでしっかりタンパク質を補うことが大切です。 また、一緒に煮込んだ大根には、消化を助ける働きが期待されています。 お魚の脂も、煮ることで程よく落ち、胃腸への負担を減らしつつ栄養を摂ることができます。
サラダに使われているブロッコリーなどの野菜も、ビタミンCの宝庫です。 茹でることでかさが減り、生野菜よりも量を食べやすくなっています。 食物繊維も摂れますので、お腹の調子を整えるのにも役立ちます。
デザートの小豆には、ポリフェノールが含まれているとされています。 甘いものは心の栄養にもなりますし、適度な糖分は脳や体のエネルギー源となります。 全体として、消化が良く、体を内側から整える優しいメニューになっています。
③ 季節と食養生—本日のメニューを読み解く
さて、ここからは少し医学的な視点でお話ししましょう。 昔から、1月7日には七草粥を食べる習慣がありますね。 これは単なる言い伝えではなく、実はとても理にかなった「養生(ようじょう)」の知恵なのです。
お正月には、どうしてもご馳走を食べる機会が増えます。 美味しいおせち料理やお酒、お餅などをたくさん召し上がった方も多いのではないでしょうか。 普段よりも味の濃いものや、消化に時間のかかるものを食べ続けると、私たちの胃腸は少し疲れてしまいます。 東洋医学的な考え方でも、この時期は「胃腸を休めること」が大切だとされています。
七草粥に使われる「すずな(カブ)」や「すずしろ(大根)」は、昔から消化を助ける野菜として親しまれてきました。 温かいお粥を食べることで、お腹が芯から温まります。 お腹が温まると、胃腸の血流が良くなり、働きが活発になると考えられています。 「冷えは万病の元」という言葉があるように、体を冷やさないことは、健康を保つための基本中の基本です。
また、春の七草には、寒さの中で芽吹く強い生命力があります。 その若い芽をいただくことで、植物のエネルギーを体に分けてもらう。 そんな自然との調和を大切にする心が、この一食には込められています。 現代医学でも、季節の食材を食べることは、その時期の体調管理に適した栄養を摂るための近道だと言われています。 今日のお食事は、まさに「食べるお薬」のような役割も果たしてくれるでしょう。
④ 食卓からの小さなエール
入院中や療養中の皆様にとって、毎日の食事は大きな楽しみの一つかと思います。 ただ、冬場はどうしても活動量が減り、お腹が空きにくくなることもありますよね。 そんな時は、無理をして全部食べようとしなくても大丈夫です。
まずは、温かい汁物やお粥を一口、召し上がってみてください。 口の中に温かいものが広がると、それだけで食欲が少し湧いてくることがあります。 今日のようなお粥や煮物は、柔らかく仕上げてありますので、あまり噛む力を使わずに食べられます。 飲み込む力が弱くなっている方にも、安心して召し上がっていただける献立です。
また、冬は喉の渇きを感じにくいため、知らず知らずのうちに水分不足になりがちです。 お茶やお水だけでなく、こういったお粥や汁物から水分を摂ることも、とても良い方法です。 もし、量が多すぎると感じたら、まずはタンパク質の摂れるお魚や、ビタミンの摂れる七草粥を中心に食べてみてください。
そして何より、「季節を感じる」ことが心のリハビリテーションになります。 「ああ、もう七草の時期か」「梅の花の形が可愛いな」 そんなふうに感じて心が動くことが、免疫力を高めることにもつながると私は考えています。 窓の外は寒いですが、お食事の時間は、春の訪れを感じながら、ゆったりとした気持ちで過ごしていただければ嬉しいです。
⑤ 皆さまの健やかな毎日に寄せて
暦の上では春の兆しが見え始める時期ですが、まだまだ余寒厳しい日が続きます。 今日召し上がっていただいた七草粥の栄養が、皆様の体を温め、健やかな一年を過ごす力となりますように。 スタッフ一同、皆様の回復と健康を心よりお祈り申し上げます。
【注釈】
※各個人様にお出しするお食事は、体の状態や医師の指示により内容が変更される場合がございます。あらかじめご了承ください。
※本記事は一般的なお話であり、個々の診断や治療に代わるものではありません。食事制限や気になる症状がある場合は、必ず主治医や担当スタッフにご相談ください。

















