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2026.02.24

東洋病院 今日の献立 第26回

春を待つ体に、温かな「あん」とソースの香りを

やさしい味付けと彩りのバランスが、目にも心にも食欲を運んでくれます。病院食というと「味気ない」という印象を持たれがちですが、当院の献立は家庭的な温かみと栄養バランスの両方が整った一食です。
このお食事は隣接するサービス付き高齢者向け住宅、ショートステイやデイケアでも提供されています。入院中の方だけでなく、在宅生活を送る高齢者や通所利用者様も、同じ美味しさと健康サポートを受けられるのです。

からだにやさしい本日の一膳

皆様、こんにちは。 暦の上では少しずつ春の足音が聞こえてくる頃ですが、朝晩はまだ冷え込みが厳しいですね。 体調を崩しやすいこの時期、何よりも大切になるのが日々の食事です。

当院では、患者様の回復をサポートし、心まで温かくなるような献立作りを日々追求しています。 本日は、ある日の昼食を例に、病院食に込められた工夫と健康へのヒントをお伝えします。

本日のメインは、どこか懐かしい香りが漂う「ソース焼きそば」です。 病院でお出しする焼きそばは、油分を控えめにしつつも、ソースの風味をしっかりと活かすことで、満足感を得られるように工夫しています。 具材にはキャベツや豚肉を使い、彩りに紅生姜を添えました。

副菜には「厚揚げのカニあんかけ」をご用意しました。 ふんわりとした厚揚げに、カニの風味を効かせた温かいあんをたっぷりとかけています。 お出汁の優しい味が中まで染み渡る一品です。

汁物は、ふわふわの卵が浮かぶ「かき玉汁」です。 お出汁の豊かな香りが、食卓に安心感を運んでくれます。 これに「ご飯(小)」を合わせ、エネルギーをしっかりと確保します。

そして、お楽しみのデザートは「フルーツ杏仁豆腐」です。 口の中でふわっと広がる杏仁の豊かな香りと、なめらかな食感が特徴です。 みかんやパインの爽やかな酸味がアクセントになり、お食事の最後にさっぱりと召し上がっていただけます。

 

エネルギーと栄養のバランス解説

今回の献立には、特にお体の大切な時期を過ごされている方や、ご高齢の方の体調を整えるための栄養学的な工夫が詰まっています。

まず、大切なのはエネルギーの確保です。 焼きそばとご飯を組み合わせることで、体を動かすためのエネルギー源となる炭水化物をしっかり摂取できます。 炭水化物は脳の重要なエネルギー源の一つです。通常の食事では、脳は主にブドウ糖をエネルギーとして利用しますが、絶食時や低炭水化物食の場合には、肝臓で生成されるケトン体も脳のエネルギー源として利用されることが知られています。バランスの良い食事で適度に炭水化物を摂ることで、日中の活動を健やかに支えることができます。

次に、筋肉の維持に欠かせないタンパク質です。 厚揚げ、豚肉、卵、そしてカニ。 今回の献立には、さまざまな食材から良質なタンパク質が取り入れられています。 タンパク質は筋肉や皮膚、血液、そして免疫機能の材料となる、非常に重要な栄養素です。特に高齢の方は、加齢に伴う筋肉量の減少(サルコペニア)を予防するため、適切なタンパク質摂取が重要です。

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、高齢者でも体重1kgあたり1.01.2g程度のタンパク質摂取が推奨されています。一度にたくさん食べるのが難しい場合でも、このように朝・昼・夕の食事で少しずつ複数の食材から良質なタンパク質を摂ることで、効率の良い体づくりにつながります。

また、副菜の「あんかけ」には、栄養面以外でも大切な役割があります。とろみをつけることで料理が冷めにくくなり、最後まで温かい状態で召し上がっていただけます。

とろみは、嚥下機能が低下した方にとって、食べ物の流れる速度を遅くし、飲み込みのタイミングを取りやすくする効果が期待されています。ただし、とろみの必要性や適切な濃度は個々の嚥下状態によって異なるため、当院では言語聴覚士や管理栄養士が患者様一人ひとりの状態を評価し、最適な食事形態をご提供しています。「おいしく、かつ安全に食べていただく」ことが、私たちの願いです。

 

季節と食養生本日のメニューを読み解く

東洋医学の考え方では、冬から春へと移り変わるこの時期は、体の内側の「陽の気」を少しずつ育んでいくことが大切だと言われています。

焼きそばに添えられた「紅生姜」は、単なる彩りではありません。 生姜には古くから、体を温め、消化を助ける働きがあると言い伝えられてきました。 食欲が落ちやすい時期に、生姜の適度な刺激が胃腸の動きを活発にし、栄養の吸収を助けてくれると考えられています。

また、厚揚げの原料である「大豆」も注目したい食材です。 東洋医学において、大豆はエネルギーを補い、胃腸の調子を整える食材として重宝されてきました。 油で揚げてから煮ることでコクが増した厚揚げは、満足感を与えつつ、消化にも配慮された優れた食材と言えるでしょう。

特定の健康食品を大量に摂るよりも、この献立のように「主食・主菜・副菜・汁物」が揃ったバランスの良い食事を心がけることが、結局は一番の近道です。 さまざまな食材を少しずつ、ゆっくりと口にすることで、体内のバランスが整い、自律神経の安定にも寄与するとされています。 季節の変わり目に感じる「なんとなくの不調」を防ぐためにも、こうした調和の取れた食事が力になってくれるはずです。

 

食卓からの小さなエール

年齢を重ねるにつれて、日によって食欲に波が出るのはごく自然なことです。 「今日はあまりお箸が進まないな」と感じる日もあるかもしれません。 そんな時は、無理に全部を食べようと頑張りすぎず、まずは一口、好きなものや食べやすいものから手をつけてみてください。

今回のデザートの牛乳寒天のように、つるんとした喉越しの良いものは、食欲がない時でも比較的受け入れやすいものです。 また、冬場は喉の渇きを感じにくいため、気づかないうちに水分が不足しがちです。 お食事に含まれる汁物や、食後のお茶、そしてフルーツを含んだデザートをゆっくり楽しむことで、自然な形で水分を補給することができます。

また、よく噛んで食べることは、顔の筋肉を動かすだけでなく、脳への刺激にもなり、認知機能の維持にも良い影響を与えると言われています。 焼きそばのキャベツのシャキシャキ感や、厚揚げの柔らかな食感を楽しみながら、一噛み一噛みを大切にしてみてください。 お食事を「義務」としてではなく、「楽しみ」として感じていただくことが、何よりの心の栄養剤になります。

 

皆さまの健やかな毎日に寄せて

春の訪れが待ち遠しい毎日ですが、どうぞ暖かくして、無理のないペースでお過ごしください。 皆様が毎日をおいしく食べ、心穏やかに、健やかに過ごされることを心より願っております。

 

【注釈】

各個人様にお出しするお食事は、体の状態や医師の指示により内容が変更される場合がございます。あらかじめご了承ください。

本記事は一般的なお話であり、個々の診断や治療に代わるものではありません。食事制限や気になる症状がある場合は、必ず主治医や担当スタッフにご相談ください。

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